今日はルフィの誕生日。 闇が降り立ってから暫くは、皆の時と変わらない和気藹々としていた雰囲気が、 「さぁ、たった今からこのラウンジはあんたのお城。そして、あんたは王様よ。好きにしなさい」 私のこの言葉で一変した。 二時間前に眠ってしまったウソップとチョッパーが厚紙と金の折り紙でこさえた王冠は 壁際に吹っ飛んでひしゃげてしまって無残なものだ。 私は高いお酒を独り占めして、目の前でしつこく続く狂宴を悠然と傍観している。 さっきまではゾロもテーブルについていたけれど、胸糞悪いって顔で数本の安酒を抱えて出て行った。 ああ見えて意外とまともな部分を残した男だ。 ゛一日限りの王様"の命令でお子様二人を男部屋に運んだ他は、 暴れて逃げ出そうとした供物を仕方なしに捕まえて、元の場所に放ってそれっきり。 助けもせず、かといって混ざるでもなく。 サンジ君のこと満更でもないくせに、一人うっそりとジレンマを抱えてる。 まぁ、今日のルフィは独裁者だから、仲良くお食事なんて許さないだろうけど。 ロビンも楽しみは自分の誕生日まで取っておくとか言って女部屋に引っ込んでしまった。 夢と冒険に満ち溢れたこの海賊団にこんな毒々しい側面があるなんて思っていなかったでしょうね。 二人のお子様には私が自ら薬を盛ったからちょっとやそっとじゃ起きないだろう。 |
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さぁ、王様。 私の用意した宴にはご満足頂けて? どう?最高のプレゼントでしょう? 私の目があるせいか、サンジ君は中々啼いてくれないけれど、 こうして見ているだけでも分るくらいにイきまくってるものね。 その瞬間の締め付け、その後のうねり、性器で感じられるあんたが羨ましい。 あ、サンジ君の様子が可笑しくなった。 連続する無射精絶頂が止まらなくなっちゃったみたい。 躯が勝手に痙攣を繰り返して、 こんなるともうサンジ君は正気を保てない。 戻った時に死にそうな顔をするから私も滅多には追い込まないけれど、 どうしようもなく可哀相で殺したい位に可愛いから。 でも今日は私の前で犯される異常さに理性を手放せないのか、 いつもみたいに派手に泣き叫んではくれなかった。 小さな音に私は身を乗り出して聞き耳を立てる。 やだ、やだ、もう許して、ゆる… ああ、何て控えめで素敵な悲鳴。 なのに無粋な王様は即物的な刺激に夢中になって気付きもしない。 勿体無い。 これを堪能できたらもっともっとサンジ君を愛しく感じられるのに。 でもまぁ、今日は好きにすれば良いわ。 腐るほどの食べ物もその男だか女だかわからない生き物も、 このラウンジにあるものぜーんぶ一日限りは王様のモノなんだから 私は最後の一杯を飲み干して席を立った。 王様は精液を排出する側からテーブルにある料理を掴んで栄養補給している。 こんなんじゃきっと終わりなんてこないだろう。 頃合を計って止めに入らないと、本当にサンジ君を犯り殺しちゃいそう。 でも今はまだ全然足りないみたいだし、 流石の私も殺気立ったケダモノに手は出したくないから、 後から様子を見に来れば良いかなんて楽天的に考える。 そこまで含めて、私からのバースデープレゼントなんだから。 「ちょっとサンジ君にお水をあげて良いかしら?王様」 がつがつと突き出す腰を止めずに、獣の王様は真っ黒な瞳で私を見上げる。 ぽっかりとあいた、奈落へと通じる穴みたいだ。 時々、この化け物じみた男はどれだけ多くの質量を喰らってしまえるのかと考える時がある。 過程で交わる人間の歴史であったり心であったり、命であったり。 それらを容赦なく噛み砕いて己の血と肉と骨にする。 人の形を取りながら考えることもせず本能のまま。 人よりも、鬼。 鬼よりも獣。 けれど、だからこそ、その圧倒的な生命力に私達は惹き付けられ、 知性と引き換えに失ってしまった原始的な輝きに囚われるのだ。 「いいけど、余計なことすんなよ、ナミ」 ふふ、警戒してる。 そのぎらぎらした眼つき、ゾクゾクする。 「しないわよ。あんただって、長く楽しみたいでしょう?」 私は水差しから清水を移したコップを涎の蒸発でカサカサに乾いた哀れな口許に運んであげる。 サンジ君の本気の蹴りに王様は派手に鼻血を噴いていたけれど、 それ以上に痛めつけられたサンジ君の口許も真っ赤だ。 口の端は切れて腫れてるし全身痣と擦り傷だらけ。 泣き濡れた瞳が視線で私に縋りついた。 置いて行かないで 決して口にされない言葉が聞こえる。 「飲みなさい」 絶望にまた潤んだ蒼眼が壮絶に綺麗。 生理的な硬直から閉じられない口にコップを押し当て有無を言わさず傾けた。 顎を掴んでばしゃばしゃと乱暴に流し入れると流石に観念したのか懸命に白い喉が隆起を繰り返す。 その間も犯されっぱなしだから動きに溢れた水が鼻腔を襲って何度も咽て。 今の方が余程疲れたみたいに痩せた肩は崩れ落ちた。 「頑張ってね、サンジ君」 自然な成り行きで金色の頭を撫でた瞬間、しなる鞭の痛みが私の手を襲った。 「痛!」 「余計なことすんなつっただろ!!」 「ルフィ!てめ…!!」 悲鳴と重なったのは王様の怒号。 そして未だに私を守ろうとする騎士崩れの叱咤。 撫でる行為にテリトリーを侵されたと感じたのか、私の手を払った王様は犬歯を剥き出しにして威嚇してくる。 ぐずぐずに解けていたのが嘘みたいな俊敏さで振り返ったサンジ君を私は痛めた右手で制し、 尻を抉り続ける猿の側に寄って湿った黒髪を掴みあげた。 「ッテ!何すんだ!」 反撃に虚を突かれた王様を無様に仰け反らせ、 視線で見下しながら現実の欠片をちっぽけな脳味噌に突き刺しやる。 「良い気になってんじゃないわよ、王様。 海の上で航海士に手をあげるなんて身の程知らずも甚だしいわ。 あんたの命、誰が握ってると思ってんの?」 所詮コイツの頭に乗っているのは薄っぺらな紙の王冠だ。 部屋の片隅で潰れているあの紙屑。 けれど気の良い仲間達の慈愛と、 こうして脚を開いて受け入れる料理人の優しさで作られている。 そして、この私の真心だって。 ほんの少し、黒い瞳に人間の理性が戻るのを確認し、 「間違えんじゃないわよ」 「…おぅ」 ムスっと答える王様に、にやりと一つ笑みを落として手を放した。 幾ら王様の汗でも付着してしまった掌は気持ち悪くて、 初めの激しい抵抗で汚れた白いシャツの背中に擦り付ける。 こっちも湿っていたけれど、普段が清潔だから気分的に平気。 「じゃあ、楽しんでね。王様」 「おう!」 今までのやりとりなんて一瞬で忘れたみたいに掴んだ尻を抱え直した王様が 再び傍若無人に振る舞い始めたけれど、 それでもさっきよりは磔にされた頼りない痩身の反応を楽しむかの視線を向けているから。 うん、良い傾向ね。 どうせなら、この時間を有意義に活用してもらいたいわ。 「あう!」 静止した陰茎に馴染んでしまった腸壁が痛んだのか、 床に擦り付けた頭部から漏れたのは苦しげな呻きだった。 でも、すぐに蕩けて甘くなる。 邪魔者は退散するから、遠慮なく啼いてね、サンジ君。 ちゃんと迎えに来てあげるし、その後うんと優しくしてあげるから。 私はハイヒールの音も高々にラウンジを後にした。 ハッピーバースデー、我等が船長。 愛すべき王様。 |