乱暴に少年の痩せた足を割り開いた。
掴まれた膝裏はいっそ青白いとでも表現できそうな程に不健康を匂わせる。紫紺の動脈が更に退廃的な印象を浮き彫りにしていた。このリィンバウムでは平均的な容姿を持つソルの濃い色の手とは対照的で、まるでモノクロ絵図を見ているようだ。
投げ出された白い身体は身じろぎもせず、激情をぶつけられたきり、散ったままの横髪がぼんやりと開かれた切れ長の目尻を覆っていた。
殴られた少年の頬は赤みを帯びているが酷く腫れ上がることはなさそうで、拳ではなく平手で打ったのは正解だったとどうでも良いことを考える。それが後々の己の立場を慮ってのことかは自身にも判断はつかなかった。本当に下らないことだ。

少年の放ったものを指に絡めながら思考した。

お気に入りの玩具に粗相をされたと知ったら、父はどんな顔をするだろうかと。
それも、それまで従順に頭を垂れていた駒にだ。

殺されるだろうか。放り出されるだろうか。それとも半殺しの体で生かされるのだろうか。
できることなら安らかに目を閉じて、そのまま苦しみもせず死ねればいいのに。

世界はどこまでも続く深い闇。きっと生きている内には出口など無い。

目の前の、白く、生々しい肉が己に与えられた最後の食事に思える。
数日後には、幹部会議から帰宅した父親がこの肉体を検めるだろう。そうしたら、平穏に暮らすことなど適わないかもしれない。何より、この少年が主人にそれを訴えない訳が無いのだ。

最後の晩餐。ならば良く味あわなければ。

そして、感想を言ってやろうとほくそえむ。

腰骨を撫でる指先で、窪みを軽く抉った。中心には触れず、ただ手触りの良さを堪能していると、焦れたのかひくりと痙攣を返しながら、少年が更なる刺激を訴えてきた。
早くと。
笑いながら泣きそうな顔をする、奇妙な少年。ソルは嘲り「やだね」と返した。
指先をそろりそろりと大腿に這わせるが、その触れ方は産毛を撫でる程度の距離感しかない。

「あ、…うぅっ」

焦らされるのが、そんなに堪らないのか。
涙が少年の双眸をきらきらと輝かせた。陰茎の周辺を掻き乱せば、それだけで処女のように脚を閉じようとする。戒められた両手は無理にでもと解放を望んでいるかのようにのたうち、鎖を鳴らして革のベルトが皮膚に食い込んだ。そんな自虐の様が見ていて愉快で、更に大きく両足を広げてやった。
羞恥を煽る行為に、少年は女のように啼いた。
つるりと丸い臀部まで少年自身に見える程に体を折り曲げて、その双丘に舌を這わせて舐め上げれば、それだけで陰茎を白濁が伝い、滴り落ち、先程の放出物の上に重なってその身体は汚れて行く。室内の明るさに晒された窄みも少年自身から垂れ落ちていた乳白色に濡れ、厭らしく蠢いていた。

誘い込まれるかの如く、ソルは舌を押し付けた。

「やあっ」

脇腹を弄った時と同じ反応だった。襞の一枚一枚を舌先で丹念に拭えば、切羽詰った悲鳴が止め処なく溢れ出す。ただ先程と違うのは、その嬌声の中に拒絶の意を表す単語の比率が多いことか。

「やめてよ。お願いだから、そんなこと、しなくていいっ」

心情的には本当に嫌なのかもしれない。どれだけ男を銜え込もうと、排泄器官を舌で弄ばれ、しかもそれをまざまざと見せ付けられる事態に免疫は無いのかもしれない。もっと酷い事も厭らしいこともされているだろうに。その反応は意外だが面白くはあった。
ソルはと言えば、危惧していた程の嫌悪感は無く、少々拍子抜けしたくらいだった。
少年の身体は隅々まで手入れされていて、凡そ不快を感じる体臭を発しない。脇だろうと、陰茎だろうと。
こうして舌を擦り付けている後口ですら、当たり前の臭気からは無縁だった。
だから抵抗無く唇を寄せたのだ。しかし、それは少年の最大級の泣き所を突付き回す結果となったようで、暫く弄れば喘ぎに鼻を啜る音すら混じり出している。
すすり泣いて、嫌だと捩る身体のそれらが大嘘であることくらい、少年の陰茎を見ればわかる。とろとろと蜜を零すソレは言葉より雄弁だった。

「この助平野郎が」

低く唸り、舌を尖らせ突っ込んでやった。
一際高い音と共に白い生き物は波打った。長さも無い肉の塊をそれでも離すまいとする筋肉の卑猥さに呆れながら、ソルは成る丈奥まで味わおうと尻を割り開いて顔を押し付けた。
粘液を纏いあった肉と肉が摩擦で厭らしい音を立て続ける。
ソルの舌から唾液をこそぎ取ろうとする括約筋の動きが、それらを慌しくする。
打てば響く少年の身体は面白く、夢中で吸い付いていたものの、酷使した舌と唇にいい加減疲労を感じてにゅるりとそこを解放した。

響く息遣いが粗い。

放たれた肉襞が、物欲しげにひくついている。
中指を一本、爪先のみを食い込ませる形で入れてみた。

まるで楽しみを先延ばしにするようにその場でゆるりと円を描いてみると、受け入れることに慣れた穴は僅かに開いては獲物を飲み込もうと締め付け奥へと誘おうとした。
それは、ソルが初めて見る奇妙な動きであった。
少し力を加えただけで中指は容易く引き込まれてゆく。
凄いと、素直に思う。
それが調教の賜物であろうと、その瞬間に軽蔑の思想は頭の端にも上らなかった。
まるで意思を持って含みたがるかに見える肉と、そこに包まれた指は熱く、そのことに異常に興奮した。





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