三本での抜き差しを繰り返し、時には捻りを加えて肉襞の噛み具合と腸壁の緩みを確認したソルは、小指を添えて更に深く内部を犯した。
苦しげな声が漏れるもそこは無視し、親指の付け根まで、掌の半分までを体内に納めてしまう。
手の甲に肉襞の感触と体内の熱をリアルに感じ、ぶるりと一つ身震いをした。
気持ちが良かった。射精を促された気がした。
指を広げようとしたがまだきつく、緩い出し入れと捻りの運動を数度行い、下半身を持ち上げられそうなほどに強く内部のしこりを押し上げた。

「ああっ」

またいってしまいそうな声をあがった。苦しくは無いのだろうか。痛くはないのか。嘲りと興味のない交ぜなソルの耳に泣き出しそうな声は引っ切り無しに届く。苦痛の悲鳴ではありえない、甲高い声に鼻で哂いながら、親指を濡れた掌に添え。
少年の肉体を片手で貫いた。

「うあ───」

解れていた筋肉が一気に緊張し、それ以上を拒むように固く縮こまるのをソルは奥歯に力を込めて押し開いてゆく。ぎゅっぎゅっと少しずつ、押し問答などせずに突き進む。乱暴な過程にも耐えていた入り口が遂に裂けて鮮血を溢れさせてもソルは拷問とも違わぬ行為をやめようとはしなかった。
ソルにとっては他愛も無いことだ。苦悶の只中にいるのは己ではなく少年なのだから。
他人の痛みなど遠く、恐らくは少年でなくともソルの琴線に掠りもしないだろう。
一番の難所を通り抜けた後、ソルの拳は大した抵抗もなく少年の体内へと納まっていった。

「あ、あ…ぅ…」

「はは、入ったな」

相当な痛みなのだろう。白い大腿が腹の筋肉が小刻みに震えて萎縮している。

「痛いか?」

優しく尋ねるソルの言葉に少年は頷く気配を見せた。しかし、ちらりと見えた口角はやはり釣りあがっていて、ソルの機嫌は一気に悪くなる。まだ笑うのか。
言葉にせず、冷たい眼差しで哀れな贄の傷口を凝視する。
白い腹の内部に進入した掌は真っ赤な肉に包まれているだろう。胎児の如く、熱い肉の揺り籠で護られる様を想像した。

「や、やめ!動か…!!」

本気の悲鳴も届かぬふりをして入れ易く伸ばしていた指を握り締めた。

異様な形に膨らんでいるであろう腸の痛みは如何程か。少年の白い面はより一層青白く変色してゆく。
はっはっと短い呼吸を繰り返す胸に、腹に、ソルは丁寧な口付けを落とした。
動かす度に引き連れる内部に少年は翻弄され、かちかちと歯を鳴らしている。そっと妊婦の腹の中身を探るように頬を当ててみた。肉の薄い腹の下、確かに異物の動く気配がする。強引なソルのパーツに荒れる腸の蠕動が騒がしい。ここだけは抵抗するのだなと、ソルの頬に笑みが浮かんだ。

無体に獲物の体温が下がるのを感じ、それにつれソルの非常故の高揚も落ち着いてゆく。余りに窮屈な内部では動きも制限されてしまうし、このままこの器官を麻痺させてしまってはこれより先の楽しみはないだろう。ゆっくりと、殊更焦らすように…そんな思考が真っ先に浮かんだが、どうせなら衝撃を与えてやった方が気分が良い。
何の躊躇いもなく、一気に腕を抜き去った。

鈍い悲鳴が上がる。これならどうだと見上げた先では、少年が束の間、歯を食い縛った形相で震え笑みを消していて、ソルは遠慮無く嘲笑した。その顔が見たかったのだ。気分は向上し、侮蔑と少しだけ可愛がってやろうという心も湧いた。良く耐えたと褒めてやりたいくらいだ。
目尻に溜まった涙に口付けを落としてやると少年が酷く驚いた顔をする。
「?」
その表情に、今度はソルの方が戸惑いを覚えた。眉根を寄せ、眼を見開いたその表情は、例えるなら今にも泣き出してしまいそうな感情の揺れを表すもの。相変わらず口角は釣り上がっているが、口許はきゅっと閉じられて何かを痛々しく耐えている様にも見えた。
そして、青褪めていた頬が一気に朱を帯びた。
一連の変化は瞬く間に起こり、少年は取り乱したように何度も拘束された手を引き降ろす動作を取る。
冷め切った印象の瞳は瞼に閉ざされ、その視線は完全にソルを拒絶してしまった。
何なのだ。この反応は。
訳がわからず暫し少年の観察に徹したが、目の前の獲物がぴくりとも動かなくなってしまったことに飽きを覚えてそろそろと下半身の部位に体勢を戻した。少し熱が冷めてしまい、意味も無く両肩の間接を動かし大袈裟な溜息を吐く。少年の心理などというどうでも良いことに流れを乱されてしまったことが残念で、そんなものに関心を惹かれた自分にも呆れた。そもそも目元にキスを施すなど、まるで恋人同士の様ではないか。馬鹿馬鹿しさに勝手に拗ねたソルは、それを誤魔化すように再び右の中指と人差し指を少年の内部に埋めた。充分過ぎるほどに解れたそこはソルの節張った指を難なく頬張り、租借するかの如くひくりひくりと蠢く。先の激痛に萎縮していた筋肉は一変して蕩けて、進入物に柔らかな愛撫を施してきた。未だ出血は続き、処女の鮮血の如くシーツを染めているというのに。大した順応性だとソルは思う。
父親が夢中になるのも頷けた。この肉体は支配者のどんな遊びにも適応して、最大限の奉仕が可能だ。得難い素材であると思う。その上従順で決して逆らわないのだから、その価値は計り知れないものがあるだろう。それでも、自分には必要ないがと心内で付け加えた。





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