しこりを撫で、爪の先で擽る。

「ふうっ」

少年は歯を食いしばって声を殺した。素直に啼かなくなった少年の変化にさして気を留めるでもなく、ソルは灼熱の奥地を翻弄する。弄る度にぴくぴくと反応する動きも、ぬめる感触もソルは好きだった。皮膚の下の脂肪に直接触れているようで、妙な興奮を覚えるのだ。随分と猟奇的な想像だという自覚はある。己も大概良い趣味をしている。
無心に内部を探る内に眼下で揺れる幹は濁った体液に再び塗れ、強めに一撫ですれば欲を放ってしまいそうになっていた。ソルの唯一知る女の蜜肉よりも確実に感度が良かった。誘ってきたのは彼女の方であったから、セックスには慣れた身体であった筈だか、教えられた技巧を駆使してもここまで簡単に陥落したりはしなかったし、性急に核を弄れば痛がり、濡れたところで女自身の心持ちが伴わなければ入り口は固く引き攣った。回数をこなすには回復力も弱く、一晩に一度、ないし二度の到達すれば満足気であった。彼女がそれ程貪欲な方ではなかったのかもしれないが、それでも快楽の発生源の間近にあるというだけの排泄器官でこんな風に乱れる少年の肉体は異常だと思うのだ。
駄目なカラダだ。呆れ、吹き出してしまいたくなる。この少年がこれから先、ここから開放されたとしても男としてまともに生きて行くことは不可能な気さえする。玩具として責め殺される方がましなのではとも…。
なまじ容姿が端麗で、淫靡な雰囲気を持っていたから。そして、類稀なる感度の肉体的素質が伴っていたから。この少年はこの世界で性奴隷として生きることを強いられ、挙句ここまで洗脳されてしまっているのだ。
可哀相な奴ではあるが仕方の無いことだ。個人的な憎悪の感情を抜きにしたって、この少年での楽しみ方はきっと決まってくる筈。だからこそ今の少年のこの環境が存在するのだ。
放出を待ち望む身体が、褒美も寄越さず引き抜かれる指にうねった。
うう、と唸りにも似た悲鳴を紡いで少年の目尻に雫が溢れる。内股を撫でれば、閉じようとする包帯だらけの脚が思い留まり躊躇いを見せるのは、普段勝手な動きは許されていないせいなのだろう。深奥の欲の溜池の淵に爪を寄せ、軽く叩くだけで痙攣する程解放は近いと言うのに、ソルの指は急く事もなく離れては太腿の付け根の窪地を探り、リンパ腺を撫でた。助けて…と、か細い声が聞こえる。とても気分が良い。
そろそろ、くれてやるか。
身体を起こして、少年の全身を見下ろした。
放置された哀れな肉が束の間捨て置かれる絶望に震えている。
尊大に、勿体つけた仕草で腰を突き出してパンツのボタンを外すと、少年の視線がその動きに釘付けになった。じり下ろされるジッパーを残された一つきりの瞳が懸命に見つめ、狭まっていた両脚の狭間が僅かに開いた。期待が如実に現れた仕草にクッと笑ってやれば、途端に少年は顔を大きく逸らした。羞恥の様相など相手を煽るとわかり切ってのこうどうなのだろうが、そこには確かに余裕を超越した焦燥が見て取れ、ソルは煽情されつつも冷静に下着を下ろして自身を晒した。己の秘部を見せることに戸惑いは無い。場慣れした女にモノに関しては立派だとお墨付きを貰っていたから自信はあった。

「目ぇ瞑ってないで見ろよ。これからお前の中に入れてやるんだから」

一向に視線を向けない少年に焦れたソルの声が刺々しく降り注ぐのに、半端な包帯の巻き方をされた頭部がゆるゆると動いた。漆黒の瞳がソルの表情を盗み見、そして股間へと焦点を合わせる。荒い息がひゅっと呑まれた。まだ完全に起立していないそこに、それでも少年の頬が強張り、見る見る内に染まってゆくのをしてやったりとほくそえんだ。少年が内臓に収めるには過ぎる大きさで恐れ戦いているのか、それとも巨大な質量に掻き回されることへの期待に震えているのか、はたまた自身よりも秀でたイチモツを見せ付けられて内心苦虫を噛み潰しているのか。しかし、そんなことはどうでもいいのだ。
嵐の大海原に放り出された小船のように、少年の感情が揺さぶられて表面に現れるのは愉快だった。初めの頃の澄まし切った態度からは想像もできないくらいに、良い具合に坂を転げ落ちてくれているのだから。その定位置で凝り固まった精神の均整を崩せれば、何がきっかけでも構わない。
初めて出会った日に人を喰った様相で見下ろしたあの表情を、目つきを。潰してしまえるのなら。

「そうだな…取りあえず舐めてもらうか。どうせこっちが乾いてたら入んないんだろ?それともこのままでもいけんのか?」

先程は濡らしてもいない片手で突っ込んだが、敏感な陰茎を不完全な状態で挿入するには躊躇いが沸く。痛い思いをするのは御免だった。
少年は「無理ではないけど…」と言葉を濁した。否定しない辺りに強姦紛いにいきなり犯される事など日常茶飯事であろう事実が伺える。

「最初は…キツイと思う。…君の方が」
「お前は?」
「………」
「ふん。面倒だな」

つまり、勝手に入れて一人放出することは可能ということか。それもどうかと思う。解放のみを目指して動くなど、猿と同じではないか。少年の顔が一突きごとに苦痛に歪むというのも魅力的ではあるが、きっと長く楽しむことは出来まい。焦らしもなしでは楽しみは半減する。先程の快楽に翻弄されてのたうつ身体の方が弄りがいがあるというものだ。

「じゃあ、いい」

のそりと、悪い足場に手を着きつつベッドの上を移動して少年の右脇と左肩を跨ぐ形で膝を着いた。





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